玉栄堂の鎚起銅器職人だった初代 山崎文言氏は、1918年にスプーン工房を開設し現在の山崎金属工業株式会社を創業しました。
山崎金属工業は2018年に創業100年を迎え、2019年6月7日(金)〜7月21日(日)まで燕市産業史料館で「山崎金属工業株式会社100周年記念展」が開催さました。
───世界市場の取り組み
現在の代表取締役社長 山崎悦次さんは1964 年に入社。世界65ヵ国を周り、ドイツの銀器メーカーをはじめ、デンマークやフランスなどの世界的一流ブランドに認められ、共同で製品開発を行いました。海外への輸出は、通常日本商社と海外商社の2つのルートが必要でしたが、直接取り引きすることで為替の変動に影響されにくいビジネスモデルを作り上げました。
1980年には、アメリカニューヨーク現地法人を設立。アメリカの社長としての経営ビジョンを明確にし「高品質(妥協しない)」「デザイン(ものまねしない)」「マーケティング(市場・文化)」「スピード(どこよりも早く)」など世界に勝てる方程式で市場を席巻しヨーロッパでも知られるメーカーになりました。
奥山清行氏が率いる、KEN OKUYAMA DESIGNとの共同開発により生まれた枝をモチーフにしたカトラリーEDA(エダ)は、世界最大級のデザイン賞、Red Dot Design Award 2013(ドイツ)で最高賞(Best of the Best)を受賞。
同じく、KEN OKUYAMA DESIGNとの共同開発でRed Dot Award(ドイツ)を受賞した(左から)STILE(スティーレ)裏面漆仕上げ、STILE(スティーレ)オールバトラー仕上げ、SHIZUKU(しずく)オールバトラー仕上げ。
ノーベル賞90周年オリジナル。1992年に1,000セット限定販売した NOBEL JUBILEE ノーベルデザインカトラリーセット。
───日本法人社長としてのイノベーション
1984年には日本法人の社長に就任。社是を「Think」(考えよ)として、ヨーロッパの模倣から始まったカトラリーデザインにイノベーションを与えました。
1991年にはノーベル賞90周年記念晩餐会用のテーブルには山崎金属工業のカトラリーが並びました。デザイナーに起用されたゴナ・セリン氏とは30年来さまざまな仕事で関わり、彼の高いデザイン要求を形にしてきた実績を認められ候補に選ばれました。デザイン&マーケティングの考え方やテーブル全体のコーディネート力など、総合的な評価を受け採用されました。
私達が最も大切にしていることは、カトラリー単体でのデザインはしない。カトラリーはテーブルコーディネイトのひとつのアイテム。時代ごとの人気のある食器やグラスなどとの組み合わせを考えることがマーケティングとして社内に浸透しています。常にその時、最も人気のある器やグラスを見るようにしています。また、できないことを可能にするのも社風でしょうか。どんなに難しいデザインでもできないとは誰もいいません。
クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」で使用されているカトラリー。
クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」で販売されている10ピースカトラリーセット。
創業者・文言(ぶんげん)の名前をシリーズ名とし、その魂を受け継いだ手仕事文化を見直すモデル。特徴は漆とステンレスを組み合わせ、カトラリー以外は、ほとんど金型を使わずに丁寧に手仕事で仕上げました。
───昭和、平成、令和そして未来へ
最近マーケットが変わってきているように感じます。ヨーロッパでのカトラリー生産のほとんどがアジアへ移行したことで、日本製のカトラリーに求められている品質やデザインが明確になっているように感じます。
国内でも日本初のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」、JR東日本 トランスイート「四季島」で使用されているカトラリーなどのコラボレーション。これからのカトラリーにはより品質の向上や新しいデザインへのイノベーションが必要になってきていると思います。これまでの経験を活かし、さまざまな企業とのコラボレーションを実現していきたいと考えています。
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山崎金属工業株式会社
〒959-1263 新潟県燕市大曲2570番地 TEL. 0256-64-3141(代表) FAX. 0256-64-3145 |